2024年4月1日事務所移転のお知らせ詳細

Gマーク認証と働きやすい職場認証について

事業者さん
特定技能外国人ドライバーを受け入れるには「Gマーク認証」か「働きやすい職場認証」を受ける必要があるって聞いたけど…うち…結構働きやすいよ。
行政書士
そうですね,社長の会社はドライバーさんの定着率も良いですし,働きやすそうな会社ですよね。この2つの認証はそれを第三者に認めてもらう認証です。

※本ページは主に貨物自動車運送事業における両制度についてを説明いたします。

目次

概要

Gマーク認証(貨物自動車安全性優良事業所),働きやすい職場認証(運転者職場環境良好度認証制度)は,自社の法令順守や安全な運行への取り組みや,より働きやすい労働環境への取組みを第三者(認証実施団体)によって認証してもらう制度です。
Gマーク認証については2003年7月からスタートし,2023年3月時点で全国28,521事業所が安全性優良事業所として認定されています。
働きやすい職場認証については2020年にスタートし,2023年7月の時点で全国10,626事業所が働きやすい職場として認証されています。
Gマーク認証については公益社団法人全日本トラック協会,働きやすい職場認証については一般財団法人日本海事協会が申請先となっており,それぞれ申請期間が定められており年一回の申請受付となっています。

このどちらかの認証を受けていることが,特定技能外国人を受け入れるための要件として定められています。

Gマーク認証について

Gマーク認証は「安全性」の視点から優良な事業者が選ばれることを目標として,利用者がより安全性の高い事業者を選びやすくするための環境整備を図るために,第三者(公益社団法人全日本トラック協会)が認定し,公表する制度です。
初回認定時は2年間,1回目の更新時は3年間,2回目の更新時は4年間の有効期限が定められ,2023年度より6回目の更新を迎える事業所については「長期安全認定事業所」として認定し「ゴールドGマーク」が使用できるようになりました。

認証対象について

Gマーク認証は正式名称を「貨物自動車安全性優良事業所認定」といいます。
正式名称に「貨物自動車」と入っている通り,貨物自動車運送事業者のみを対象としており,貨物軽自動車運送事業者を除く一般貨物自動車運送事業者及び特定貨物自動車運送事業者の営業所がその認証対象となっています。

営業所ごとの認証となりますので,〇〇運送が本社営業所と東京営業所,大阪営業所と3営業所体制で事業を行っている場合,そのそれぞれの営業所で認証を受ける必要があります。

貨物自動車運送事業法に定められた認可申請や届出を怠っている場合,社会保険に適正に加入していない場合は申請ができません。

申請受付期間について

2024年はWeb申請が7月1日から7月14日,窓口申請は7月1日から7月12日となっており,例年7月に2週間程度受付期間を定めて申請の受付が行われています。

評価項目について

評価項目は書面により次のⅠからⅢ項目を点数化して行われます。
尚,評価項目については法令等の改正により変更となる可能性があります。

Ⅰ.安全性に対する法令の遵守状況
1.事業計画等・乗務員の休憩・睡眠施設の保守,管理は適正か。
2.帳票類の整備,報告等・事故記録が適正に記録され,保存されているか
・運転者台帳が適正に記入等され,保存されているか。
・車両台帳が整備され,適正に記入等されているか
3.運行管理等・運行管理規程が定められているか。
・運行管理者に所定の講習を受けさせているか。
・事業計画に従い,必要な運転者を確保しているか。
・過労防止を配慮した勤務時間,乗務時間を定め,これを基に乗務割が作成され,休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか。
・過積載による運送を行っていないか。
・点呼の実施及びその記録,保存は適正か。
・乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か。
・運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か。
・運行指示書の作成,指示,携行,保存は適正か。
・乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか。
・特定の運転者に対して特別な指導を行っているか。
・特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか。
4.車両管理等・整備管理規程が定められているか。
・整備管理者に所定の研修を受けさせているか。
・日常点検基準を作成し,これに基づき点検を適正に行っているか。
・定期点検基準を作成し,これに基づき,適正に点検・整備を行い,点検整備記録簿等が
保存されているか。
5.労基法等・就業規則が制定され,届出されているか。
・36協定が締結され,届出されているか。
・労働時間,休日労働について違法性はないか(運転時間を除く)。
・所要の健康診断を実施し,その記録・保存が適正にされているか。
6.運輸安全マネジメント・運輸安全マネジメントを的確に実施し,輸送の安全に関する計画の作成,実行,評価
及び改善の一連の過程を円滑に進めているか。
Ⅱ.事故や違反の状況
1.事故の実績・2024 年11月30日から過去3年間に,事業所の事業用自動車が有責の第一当事者となる,自動車事故報告規則(国土交通省令)第2条各号に定める事故がないか。
2.違反(行政処分)の実績・2024 年11月30日において,事業所に,貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の点数が付加されていないか。また,点数がある場合には,当該事業所に係る行政処分の累積点数は何点か。
Ⅲ.安全性に対する取組の積極性
1.運転者等の指導・教育・自社内独自の運転者研修等の実施。
・外部の研修機関・研修会への運転者等の派遣。
・定期的な「運転記録証明書」の⼊⼿による事故・違反実態の把握に基づく指導の実施。
・安全運⾏につながる省エネ運転の実施とその結果に基づく個別指導教育の実施。
2.輸送の安全に関する会議・QC 活動の実施・事業所内での安全対策会議の定期的な実施。
・事業所内での安全に関するQC 活動の定期的な実施。
・荷主企業,協⼒会社等との安全対策会議の定期的な実施。
3.法定基準を上回る対策の実施・特定運転者以外の運転者への計画的な適性診断の実施。
・効果の高い健康起因事故防止対策の実施。
・車両の安全性を向上させる装置の装着。
・ドライバー時間外労働時間短縮の取組の実施。
4.その他・健康起因事故防止に向けた取組。
・輸送に係る安全や環境に関する認証や認定の取得。
・国が認定する第三者機関による運輸安全マネジメント評価の受審。
・過去3 年間以内の行政,外部機関,トラック協会による輸送の安全に関する表彰の実績。
・リアルタイムGPS 運行管理システムなどの先進的運行管理システムの導入。
・自社内独自の無事故運転者表彰制度又は省エネ運転認定制度の活用。

認証を受けるメリット

Gマーク認証は制度創設より20年以上継続してきたこともあり,運送業界内では認知度が高く認証を受けていることが法令の順守や安全な運行に積極的に取り組んでいる事業所と認識されているため,営業活動や採用活動において荷主や求職者から選定の一つの指針となっています。

その他にも官公署や各種団体,企業からも優遇措置が用意されています。

国土交通省・法令違反に対する点数制度についての優遇。
・対面点呼に代わるIT点呼の利用可能の優遇。
・同一敷地内に所在するグループ企業間での点呼の承認。
・安全性優良事業所の表彰制度。
・規制緩和自動車の有効期間の延長。
・特殊車両通行許可の有効期間の延長。
全日本トラック協会・各種助成金の交付。
損害保険会社等・保険料の割引。

働きやすい職場認証について

働きやすい職場認証は,自動車運送事業者の労働条件や労働環境を求職者が容易に確認できるようにすることで,業界のイメージの完全を図り,自動車運転者の就職を促進するための認証制度です。

認証機関は一般財団法人日本海事協会で,認証段階は「一つ星」「二つ星」「三つ星」の認証段階があり,初めて認証を受ける場合は一つ星から始まります。
認証登録された事業者には登録証書が交付されますが,有効期限は2年間となっているため有効期限を迎える前に継続申請を行う必要があります。

認証対象について

働きやすい職場認証は正式名称を「運転者職場環境良好度認証制度」という通り,貨物自動車運送事業者に限らず旅客自動車運送事業者についても認証対象としています。
認証対象となる運送事業は以下の通りです。

  • 一般貨物自動車運送事業
  • 一般貨物自動車運送事業(特別積合せ)
  • 特定貨物自動車運送事業
  • 第二種貨物利用運送事業
  • 一般乗合旅客自動車運送事業
  • 一般貸切旅客自動車運送事業
  • 特定旅客自動車運送事業
  • 一般乗用旅客自動車運送事業(法人)

Gマーク認証が事業所ごとの認証なのに対して,働きやすい職場認証は原則,事業者毎の認証となります。
本社および運送事業許認可の対象となっている全ての営業所を申請する必要があります。

申請受付期間について

2024年は一つ星・二つ星については7月1日から9月15日,三つ星については4月16日から5月31日となっており,例年一つ星・二つ星については7月上旬に受付期間を定めて申請の受付が行われています。

評価項目について

一つ星認証には5分野について貨物自動車事業者の場合は25の認証項目が設定されており,認証項目の全てを満たす必要があります。

Ⅰ.法令順守等
1労働基準関係法令違反に係る厚生労働省及び都道府県労働局の公表事案として同省等のホームページに掲載されていない。
2労働基準関係法令の違反で送検されていない。または,送検されたが不起訴処分又は無罪となっている。
3使用者によって不当労働行為が行われたとして都道府県労働委員会又は中央労働委員会から救済命令等を受けていない。または,中央労働委員会による再審査又は取消訴訟により,救済命令等の取消しが確定している。
4道路運送法,貨物自動車運送事業法等に基づく行政処分の累積違反点数が20 点を超えていない。
5就業規則が制定され,労働基準監督署長に届出されている。また,従業員に周知されている。
636 協定が締結され,労働基準監督署長に届出されている。また,従業員に周知されている。
7従業員と労働契約を締結する際に,労働条件通知書を交付し,説明を行っている。
8本認証制度に基づく認証を取り消されていない。
9本認証制度に基づく認証に関し,例えば,認証事業者ではないにも関わらず認証マークを表示するなど,事実とは異なる内容を表示又は説明していない。
Ⅱ.労働時間・休日
10認証申請の対象営業所について,月の拘束時間(トラック・タクシー),4 週間を平均した1 週間当たりの拘束時間(バス)又は休日労働の限度違反に対する行政処分による累積違反点数が5 点を超えていない。※道路運送法,貨物自動車運送事業法等に基づく行政処分が対象。
11労働時間,休日に関する規定を計画や規則等で定めている。労働時間管理・休日取得のための取り組みを実践している。
12運転者ごとに時間外労働時間及び休日労働時間を賃金台帳などで適切に管理しているか,又はこれと同等以上の水準でソフトウェアにより管理している。
Ⅲ.心身の健康
13労働安全衛生法令に基づき、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会が設置されているか,安全,衛生に関する事項について従業員の意見を聴くための機会が設けられている。
14認証申請の対象営業所について,健康診断受診義務違反に対する行政処分による違反点数を受けていない。
15所要の健康診断を実施し,その記録・保存が適正にされている。
16心身の健康に関する先進的な取り組みを実施している。
Ⅳ.安心・安定
17認証申請の対象営業所について,社会保険等加入義務違反に対する行政処分による違反点数を受けていない。
18健康保険法,厚生年金保険法,労働者災害補償保険法及び雇用保険法に基づく社会保険等加入義務者として,社会保険等に適切に加入している。
19運転者の安心・安定のための先進的な取り組みを実施している。
20交通事故を発生させた場合の違約金を定めたり,損害賠償額を予定する契約をしていない。
21認証申請の対象営業所について,最低賃金法違反に対する行政処分による違反点数を受けていない。
22最低賃金法に基づき,最低賃金額以上の賃金を支払っている。
23歩合制度が採用されている場合でも各運転者の労働時間に応じ,各人の通常の賃金の6 割以上の賃金が保障されている。あるいは,歩合制度を採用していない。
24労働基準法に基づき,時間外労働,休日労働,深夜労働の割増賃金を支払っている。
.多様な人材の確保・育成
25多様な人材の確保・育成のための免許・資格取得支援制度を設けている。女性運転手が働きやすい環境がある。運転者のニーズに対応した勤務シフト,福利厚生制度等を設けている。

認証を受けるメリット

働きやすい職場認証については2020年にスタートした認証で,Gマーク認証に比べて歴史は浅いです。
しかしながら,特に求職者が気になる労働条件等については詳細に認証項目が定められており,人材確保の面からみると認証を受けることで大きなアピールポイントとすることができます。

また,官公署や各種団体,企業からも優遇措置が用意されています。

厚生労働省・求人票へ認証マークを表示し,働きやすい職場であることを求職者へ見える化。
・ハローワークインターネットサービスにおいて,「働きやすい職場認証制度」と検索することによる認証事業者の求人検索。
・認証事業所が取り組んでいる働き方改革の取組等を求職者にわかりやすく発信するための求人票作成支援等。
国土交通省・テールゲートリフター導入支援。
・予約受付システム等支援及び大型等免許取得支援。
求人サイト・求人サイト上で本認証取得事業者の特集ページを掲載。
・本認証取得事業者に絞った検索への対応。
・特別価格による求人掲載。
損害保険会社・労災上乗せ保険の保険料の割引。
設備改修工事業者・水廻り関連改修や設備改修工事の料金割引。

どちらの認証を受ければよいか

Gマーク認証については貨物自動車運送事業者のみを対象としているため,旅客自動車運送事業者については働きやすい職場認証を受けることが特定技能外国人ドライバーを受け入れの第一歩となります。

貨物自動車運送事業者についてはどちらの認証を受ければよいのか悩ましいところですが,Gマーク認証については主に貨物自動車運送事業法に定められた認証項目が多く設定されており,それに対して働きやすい職場認証については労働法令関連の認証項目が多く設定されています。
そのどちらも事業を行う上で大切な法令ですので,法令適応の確認という意味でどちらか弱いと思う分野の認証を受けることをお勧めいたします。

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