在留資格と査証
外国人が日本に滞在するためには「在留資格」と呼ばれる特別な許可が必要になります。一般的には「ビザ」と呼ばれますが,正確には在留資格はビザではありません。
本来ビザというのは「査証」のことを指します。査証と在留資格両方ともビザと呼ばれるものですが,どのような違いがあるのでしょうか?
査証について
査証とは,在外領事館で発給される「この外国人は入国させて大丈夫です」という推薦状です。
なぜこのようなものがあるかというと,空港や港には一日に沢山の外国人が降り立ちます,その一人一人の調査を詳細に行ってしまうと,上陸審査にとても時間がかかってしまいます。
その為,事前にその外国人がいる国の日本領事館が旅券のチェックや,その対象となる外国人がどんな人物か調査することによって,上陸時の審査を効率的に行えるようにしています。
この調査の結果,問題が無ければ旅券に査証のシールが貼られ,上陸時に入国審査官によって確認がされます。
基本的に査証は,上陸時にその役割を終えて,外国人の日本在留の根拠は在留資格へとバトンタッチがなされます。
査証があるからといって,必ず日本に上陸できるわけではなく,色々な事情を勘案して,最終的には上陸が許可されます。
査証に関しては,1回の上陸ではその効果を失わない「数次査証」や,上陸を目的としていない「通過査証」などの種類があります。
在留資格について
日本に在留する外国人は,在留資格のどれかを許可される必要があります。
観光旅行や短期の商用の場合は在留カードが発行されないですが,「短期滞在」という在留資格への該当性が求められます。
在留資格に関しては,継続的に日本国内にとどまる場合は,定められた在留期限まで上陸時の活動と変わりがなければ有効ですが,上陸時の活動を一定期間行わない場合は,取り消されてしまう場合もあるし,在留期限内でも手続きなしに日本国外に出てしまえば,その効果を失ってしまいます。
在留資格は原則1つしか持つことができず,その在留資格で許された活動のみ行うことができます。
これを「一在留一在留資格の原則」と呼びます。
在留資格の種類
在留資格は現在29種類あります。
そのいずれかに活動内容等が合致することによって,外国人は日本に滞在することを許可されます。
どんな活動をするかによって区別される在留資格
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転筋
- 介護
- 興行
- 技能
- 特定技能
- 技能実習
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在
- 特定活動
どのような身分かによって区別される在留資格
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
この29種類の在留資格のうち,少なくとも1つに該当することが外国人が日本に滞在する要件となります。
例えば,日本の会社で勤務している外国人が日本人と結婚すると「技術・人文知識・国際業務」と「日本人の配偶者等」2つの在留資格に該当することになりますが,在留資格が2つ許可されるわけではなく,そのまま技術・人文知識・国際業務の在留資格をもって日本に滞在するか,日本人の配偶者等に在留資格を変更するかどちらかを選択することになります。
在留資格の手続き
国外にいる外国人を新しく呼ぶ手続きや,期限が近くなった在留期間を更新する手続き,在留資格を変更する手続き等在留資格の手続きはいくつかの種類があります。
それぞれどのようなときに必要な手続きなのか見てみましょう。
在留資格認定証明書交付申請
外国人の方が,日本に滞在するためにはその目的が在留資格に該当し,基準省令や告示に適合している必要があります。本来であれば,その審査は上陸時に空港や,港で行われる必要があります。
しかしながら実際そのようなことが行われてしまうと一人一人の審査に時間がかかりすぎてしまい効率が悪いです。
そこで,事前にその外国人が在留資格を許可されるかを審査し,問題がない場合は証明書を交付するという手続きが必要になります。(短期滞在を除く)これが「在留資格認定証明書交付申請」であり,交付された証明書が「在留資格認定証明書」です。
在留期間更新許可申請
永住者を除く在留資格には在留期間が定められ,その期間内に限り外国人は日本に滞在できます。
しかしながらその期限を迎える度に日本から出て,新たに在留資格認定証明書交付申請を行って日本に来るのはとても手間がかかります。
そのため,在留期間更新許可申請を行うことによって引き続き日本に滞在する手続きを定めています。
在留期間についてはそれまでの在留状態が審査され,1年だったものが3年に延びたり,逆に3年だったものが1年に短くなったりもします。
在留資格変更許可申請
外国人が日本で活動しているうちに,上陸時に許可された在留の目的が変わってくる場合があります。留学生として「学ぶため」に日本に上陸した学生が,就職活動を経て日本の会社に就職したり,日本の会社で働いていた外国人が日本人と結婚したり,日本に在留する目的も時とともに移り変わり,その事情も変わっていきます。
そのような場合に,一度日本を出国し,再度在留資格認定証明書交付申請を行い,査証を申請し日本に上陸するのは申請人に対して大きな負担となります。そこで「在留資格変更許可申請」を行う事により,在留資格を変更することができるようになっています。
在留資格取得許可申請
在留資格取得申請は現在日本に滞在している在留資格を持たない外国人が在留資格を取得するための手続きです。
在留資格なしでなぜ日本に滞在できているのか少し不思議な気もしますが,外国人の両親のもとに子どもが生まれた場合が典型的な例です。
また日米地位協定(SOFA)で定められた米国軍人や,その家族等は日本に滞在するのに在留資格が必要ありません,そのためそのような者が日本で軍隊をやめた際等は,この在留資格取得申請を行い引き続き日本に滞在することができます。
永住許可申請
永住許可申請は永住者となるための手続きです。
永住者になるとそれまでは最長でも5年であった在留期間が無期限となり,在留期間更新許可申請が必要となくなり事務的な負担や費用面での負担も軽減します。
国籍はどうなるのかと聞かれることが多いですが,国籍は外国のままです。
在留カードの有効期限は7年ですので7年ごとに在留カードの更新は必要となりますが,在留期間更新許可申請に比べて必要となる書類も少ないですし,原則としてその日のうちに新しい在留カードを受け取ることができます。
手続き方法について
在留資格の各種手続きを管轄するのは出入国在留管理庁です。
申請管轄
基本的に外国人の住所地によって申請管轄が異なり,その住所地を管轄とする地方出入国在留管理官署で手続きを行います。
例えば,東京都に住んでいる外国人の申請管轄は東京出入国在留管理局です。
「品川の入管」と呼ばれることが多いですが,住所地によっては立川出張所,千葉出張所,松戸出張所でも手続きができる場合があります。
また,マイナンバーカードを利用したオンライン申請も始まっています。
審査方法
在留資格の審査については原則提出された書類をもって審査されます。
場合によっては外国人本人が出頭して事情を確認されることがありますが,あくまでも例外であり基本は書類のみの審査です。
映像が記録された記録媒体や音声データでの資料の提出は,原則として認められませんので注意してください。
出入国在留管理庁のホームページでは,それぞれの手続きに要する期間を定めていますが東京入管の場合はそれよりも大幅に審査に時間を要していますので早め早めの手続きをお勧めします。
行政書士ができること
行政書士は各種申請書類の作成を外国人の代わりに行うことができます。
また申請取次行政書士は,本来であれば外国人本人が地方出入国在留管理官署で申請しなければならないところ,申請を取り次ぐことができます。
弊所ではそれに加え外国人が安心して日本に滞在できるよう,総合的な支援を行っておりますのでお困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。