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外国人留学生を採用する際に注意すること

在留資格のアイキャッチ
事業者さん
とてもまじめで感じの良い学生から応募があったのだけど,何か気を付けることはある?
行政書士
外国人留学生を卒業後採用する際は,気を付けなければならないことがいくつかあります。
目次

どのような業務をおこなうのか

外国人留学生は多くの場合「留学」という在留資格(ビザ)で日本に滞在しています。
学校を卒業して引き続き日本に滞在して仕事をするためには,仕事をするための在留資格(ビザ)に在留資格変更許可申請をする必要があります。
在留資格の変更には審査期間があり,申請しても2から3カ月程度時間がかかりますので,3月に卒業する留学生の場合は,遅くとも1月中には申請できるように準備をしましょう。

どの在留資格に該当するのか

外国人が日本に滞在するためには29種類ある在留資格のうち,少なくともそのうちの1つにその活動内容や身分が合致する必要があります。
実際に外国人がどのような業務を行うのかをこの在留資格にあてはめ,定められた活動内容と合致するかを考えます。
例えば,留学生が卒業後に変更する在留資格で一般的な「技術・人文知識・国際業務」の場合,その活動内容は以下のように定められています。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動。
該当例としては,機械工学等の技術者,通訳,デザイナー,私企業の語学教師,マーケティング業務従事者等。

出入国在留管理庁ホームページより抜粋

どのような業務でも自由にできるわけではないですのでご注意ください。

その業務に関連したことを学んでいるか

留学生の場合は学校で何らかの学問や技術を学んでいます。
留学生が引き続き日本で働くためには,その学んだ内容と卒業後に勤務する勤務内容が関連している必要があります。
上記でも例示した在留資格「技術・人文知識・国際業務」の場合,大学や専門学校で学んだ内容が在留資格で定められた活動内容と比較検討されますが,日本語学校や高等学校卒業では学歴要件を満たしません。
日本語学校を卒業した場合も,海外での大学を卒業している場合は「技術・人文知識・国際業務」の学歴要件を満たす場合がありますので,外国人の学歴すべてを聞いたうえで在留資格を検討することとなります。

その業務に関しての職歴はあるか

学歴要件を満たさない場合も日本で働くための在留資格に変更可能な場合があります。
ただし,当該業務に関して10年以上の経験があり,それを客観的な書証で証明する必要があるため,若い留学生が在留資格を変更する場合は,実務経験で在留資格変更許可申請を行うことはあまり一般的ではありません。

それまでの滞在に問題はないか

外国人留学生の場合は在学時の状態についても在留資格変更許可申請時に審査対象となります。

アルバイトをしすぎてはいないか

外国人留学生は学業が日本に滞在する主目的であり,学業を阻害しないようアルバイトができる時間についても制限がされています。
1週間につき28時間,長期休み中は1日につき8時間以内となります。
この時間を超えてアルバイトをしていた場合は,それまでの滞在に「問題あり」として在留資格の変更が許可されないとされる場合もあります。

その他法令等の違反はないか

法令違反というと犯罪行為というのが思い浮かぶかもしれませんが,交通違反等についても繰り返し違反すればマイナスの要素として審査の対象となります。
自動車運転免許を持っている場合は,交通違反を繰り返していないかも確認するようにしてください。

待遇については問題がないか

留学生を採用する際は,必ず書面にて労働条件を通知し労働契約を結ぶことになります。
どのような待遇で外国人を採用するのか,必ず事業者と外国人で合意したうえで採用するようにしてください。

差別的な取り扱いの禁止

当たり前のことですが,外国人だということを理由として日本人労働者よりも安い賃金で勤務させることは禁止されています。
同一の労働であれば日本人と同等以上の賃金を外国人にも支払う必要があります。

場合によっては外国人特有の配慮も必要

例えば一日の内にお祈りの時間があったり,宗教上できない作業があったり外国人特有の事情で特別な配慮が必要な場合があります。
特に従来の日本企業のようなメンバーシップ型雇用の場合,勤務期間が長くなるにつれて様々な業務を行うという場合があると思います。
必ず面接時にどのような業務を行うのかを説明したうえで,就職後に業務内容について認識の齟齬がないように注意してください。

会社の規模や財務状態

外国人留学生を採用する場合,外国人本人の学歴やそれまでの在留状態だけでなく,外国人を受け入れる会社等も審査の対象となります。

会社の規模によって必要書類がことなる

外国人を採用しようとする会社等は日本の証券取引所に上場しているか,していない場合は前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中,給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額によって会社の規模がカテゴリー1からカテゴリー4までに区分され,そのカテゴリーごとに必要な書類等が異なります。
一般的にはカテゴリーの数字が小さくなれば小さくなるほど「事業規模が大きい」と判断され,必要書類についても簡略化されます。

決算文書等で経営の安定性もみられる

カテゴリー3の会社等の場合直近の決算文書の写しが求められます。また,新しくできたばかりの会社等の場合は事業計画書が求められます。
これは外国人が働こうとする会社が安定的に経営を行っていけることがそれらの書類から確認され,外国人が安定的に勤務できることが求められているからです。

まとめ

このように外国人留学生を採用する際には気を付けるべきことが多数あります。
良い人材に巡り合いぜひ採用したいと考え内定まで出し,いざ勤務を始めようと考えたところで在留資格の問題で勤務できないという事態になってしまっては,外国人にとっても会社にとっても残念な結果となってしまいます。
そのようなことがないよう,留学生の人柄や能力とともに「在留資格」についても内定前にご確認いただき外国人にとっても会社にとっても良いスタートを切ることができればと思います。

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